たった一人の親友へ〜another story〜
「あたしね、気がついたらこの海にいたの。
なんかさ、この海に来ると落ち着くんだよね」


突然さなが独り言のようにつぶやいた


「翔はどうしてこの場所が分かったの?」


「さぁ?
気付いたらこの海にいたみたい(笑)」


俺の冗談にさなはふっと表情を崩してこう言った




「あたしね、どこかで期待してたんだよ。翔が来ること…」




「え?」


さなの瞳が真っ直ぐ俺を捕らえる


「そしたら本当に来るんだもん、びっくりしちゃった」


「あぁ。そりゃさー、あんな電話来たら心配するに決まってんだろ?
今度からはちゃんと連絡するように!」






できればさ


笑い飛ばしてほしかった


欲しかったけれど


欲しくなかった気持ち





「…。
わざとだよ?」





「へ?」


「翔が来てくれると思ったから電話したの」
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