たった一人の親友へ〜another story〜
あの朝


ゆいが事務所に泊まってた日


朝からけたたましいインターホンの音が鳴り響いた


「ちょっと、翔鳴ってるよ!
翔!
もうでちゃうよ!!」


ゆいが玄関に走っていく足音が無駄に大きく聞こえて


「こら!勝手に出るなって!」


なんて大きな声で言った気がする




目の前にいたのは本当に驚いた顔をしてるさなだった


一瞬でパニックになったのはお互い同じだったと思う


とにかく言い訳がましい言葉を並べた


自分が上半身裸のこととか


ゆいの服と髪が乱れてることとか


全部全部


さなには知られたくない真実だった




「ごめん。ちょっと聞きたいことがあったの。
でもお邪魔だったね笑」


そんな冗談を言うさなは全く笑えてなくて


それでいて必死さが痛いほど伝わってきた


ゆいにさなを紹介する時


“友達”という言葉を使った自分に


どうしようもなく罪悪感を感じた


「じゃぁね」


そう言って逃げるように背中を向けるさな


さなが走り去っていくと同時に


「ゆい~!朝から可愛いなぁ」


そんな言葉をわざと大きな声で叫んだ




理由は簡単だ


その言葉がさなに聞こえるように


さなを俺の心から取り除くように


それと同時に


さなの心から俺を取り除く意味を込めて
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