たった一人の親友へ〜another story〜
「そうだよな。俺には関係ないもんな」


声が震えていたかもしれない


そう言うことがその時の俺の精一杯で


あまりの出来事に全身が震えていた


さなは俺を一度だけ見て


涙をふきながら俺に背を向けた




一人残された俺は


まるでまだそこにさながいるかのように一点を見つめ


金縛りにかかったようにそこから動けなかった




“あたしのこと分かってるみたいな振りして、全然分かってない。”


“翔のちっぽけなあんな言葉より、全然嬉しかった”


“あたしはよっぽど翔の方が都合いいと思うよ。”


“中途半端なことしないでよ”


“大嫌い!”




一つ一つの言葉がざくりと俺の胸をえぐった


今までさなのことを世界で一番理解してるのは俺だと思い込んでたけど


それは単なる俺のエゴだったんだな


あの笑顔も


泣き顔も


全部、もう俺に向けられたものじゃない


後悔しても遅い




その日はどんなに目を強く閉じても、眠ることが出来なかった


ふと目についた卒業アルバム


自分のクラスのページを開くとそこにはさなの笑顔があった


何の疑いもなく向けられる笑顔


その時初めて


俺は自分のしてしまったことの罪の大きさに


気が付いたんだ


それと同時に


さなが自分にとってどれだけ大きな存在で


どれだけ彼女のことを大事に想っていたか


ただただ思い知らされた
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