ひまわりハウス
「ここら辺に住んでるの?」
「いや…こっちに引っ越して来たばかりだ。今日からこっちで厄介になるんだけどよ……」
そう言いかけた海月の顔は不安そうだ。
「何か不安な事があるの?」
「不安…か……そうだな、俺は不安なんだと思う。今日から里子になんだよ俺」
海月はいつの間にか夕日で赤く染まった海を見つめている。
「この歳で新しい親元で暮らせとか…上手くやってけるのかとか…さ…」
あたしより何センチも背の高い海月が小さな子供に見える。
「…海月……」
海月の手を両手で包む。海月は目を見開いた。
驚いたようにあたしをじっと見つめている。
「海月、あなたは幸せになれる。絶対に絶対に幸せになれるから…」
そんな不安な顔をしないで欲しい。これからあなたを待つ幸せから逃げないで欲しい。
「愛される事を恐れないで…少しずつ歩み寄っていけば必ず幸せになれるから…」
安心させるように笑顔を向ければ海月は困ったように笑う。
「不思議な奴だな…お前…
見ず知らずのお前にこんな事話して…そんで救われてんだからよ…」
そう言って笑った海月の顔に、先程までの不安は感じられなかった。