俺の姫様



こうやって、こいつに救われたのは初めてだな。
…いや、もしかしたら、いつも救われてたのかもしれない。

翔といる時は気が楽だ。
あいつがいなければ、学校は地獄でしかない。


翔は俺を“俺”として見てくれる。家柄なんて気にせずに。


…そんなところも少し、姫梨は似ている気がする。
だから、惹かれたのかもしれないな。

ただ俺を、1人の人間として、普通に接してくれる。そんな女、初めて会った。

親も、会社も、ルックスも、何も気にせず、周りのやつと同じように話して、心からの笑顔を見せてくれて―…。


あんなに楽しそうに空を見て、あんなに真剣に何を食べるか迷って、あんなに表情がコロコロ変わる…少し、いやかなり変わったやつ。

でも…、たまらなく愛しいんだ。

この出会いは絶対に無駄にしないと、静かに心に誓った。



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