あいことば。
ぴぴぴ、
「そういうことだから、じゃあね」
幼いあたしを残して出ていったお母さん。
最後の言葉は、毎日仕事に行く時言っていた台詞だった。
いつも同じことをリピートしている生活だったから
出ていくことなんて、あたしには分かる訳なかった。
でもあたしはいいこだから、
だから大丈夫!
何十回も言い聞かせた
そんな微妙な幼少期をすごしたあたしは
すっかり考えがひねくれていて
人間なんて信じない方がマシだと思っている
同情されるのも、迷惑
…上っ面だけのクラスメイトなんて大嫌い
でも、あたしはいいこを演じ続けた
小学校・中学校と普通になにごともなく過ごした
友達の多い、社交的な子
まあ中三でそれは崩れたけど。
上手く世の中が渡れればそれでいい、
そう…それでいいんだ…
***
「茉里!番号でてるよ!見に行かないの?」
後期受験、合格者発表の日。
あたしは用意もせず、家でずっとテレビ画面と格闘していた
「ねえ、茉里ってば!聞いてんの~?」
「・・・・・・・うん、多分。」
もお~、と呆れた顔でドアを閉めていった彼女は
身寄りのないあたしを唯一引き受けてくれたおばさん。
おばさんといっても歳はそんなにはなれてなくて
確か24.5らしい。
あたしのことは娘のようにかわいがってくれるし
タバコだろうが酒だろうが、ある程度までは許してくれる
そんななんともいいひと。いいおばさん
でもおばさんって呼ぶと嫌がるから
あたしは「ゆきちゃん」ってよんでる
本名は白鳥幸恵(シラトリユキエ)さん、だからゆきちゃん。