永劫の罪人 光の咎人
「な……!」

 少女に押し負かされ、男は驚きの声をあげる。
 そんな彼に現実を受け入れる猶予も与えず、マテリアは男のみぞおちを剣の柄で突く。男の身体がぐらりと揺らぎ、地に落ちた。

 賊が一斉にマテリアを見た。

「だ、誰だ!」

 裏返った声で、マテリアの一番近くにいた賊の一人が叫ぶ。

「私はマテリア」

 目を細めて睨みつけながら、マテリアは賊たちを見渡し――わずかに息を切らせていたガストに視線を向ける。
 そして、涼やかな微笑を向けた。

「加勢するぞ、アスタロ」

 口にしたのは、この中の誰でもない名前。
 しかしマテリアの目はしっかりとガストの姿を捕らえ、言葉を送っていた。

「アスタロ? ガスト様を別の人と勘違いしてる?」

 マテリアたちから少し離れたところで足を止め、ロンドは困惑した声を漏らす。

「あ、ああ、恩に着る」

 理解しにくそうだが、マテリアが敵ではないことと、賊が混乱している今が好機と踏んだのだろう。戸惑いつつもガストは彼女に応える。

 マテリアはうなずくと、賊の中へ切りこんだ。ガストもそばの警護隊員に目配せして、同時に攻撃をしかける。

 身を低くして、マテリアは賊の間を縫うように駆ける。
 すれ違いざまに一撃、一撃、確実に急所を突いて気絶させていた。
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