永劫の罪人 光の咎人
 さっきまでの殺気と喧噪は消え、静けさが辺りを包む。

 マテリアは軽く息を吐くと、ビクターのところへ近づく。
 鋭くなっていたマテリアの目が、優しい曲線を作った。

「剣、ありがとな」

「いや、どうってことは……」

 差し出された剣を、ビクターは己の腰へ戻す。
 そしてマテリアは身を翻し、戦い終えて汗をぬぐうガストへ声をかけた。

「いつもはもっと小技を使うのに、今日は大振りだったな。面倒だったのか? アスタロらしくないな」

 初対面であるはずのガストへ、からかいの声をかけるマテリアは楽しげであった。

 はたから見る分には微笑ましいが、言われた本人は面白くないだろう。
 憮然とした顔で、ガストは彼女へ足早に寄っていく。

「当然だ。人違いだからな」

「え? 何言ってるんだ、アスタロ」

 マテリアが不思議そうに目をまたたかせ、「何の冗談だ?」と苦笑する。
 誤解がとけずに苛立っているのか、ガストはぶっきらぼうに答えた。

「俺はアスタロじゃない、ガストという」

「へ? あれ? そういえば、なんか顔が老けてる……それにちょっと髪も短い。アスタロ、何か悪い物でも食べたのか?」
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