永劫の罪人 光の咎人
二章
(……あったかい)
まどろんだ意識の中。
体を取り巻く温もりが気持ちよくて、マテリアはもっと温まろうと体を丸める。
(ん? スベスベする?)
マテリアが脚を動かすと、肌触りの滑らかな布がこすれた。
「よっ、おはようさん」
知らない男の声。思わずマテリアは目を開ける。
そこには隣のベッドで腰かけ、にやけ顔で見つめてくる男がいた。
何だか軽いヤツ、それが第一印象だった。
顔は決して悪くないのに、漂う空気が三枚目だ。
「アンタ誰?」
頭はハッキリしてきたが、体はまだ重く、動かすのは面倒だった。マテリアは体を横たえたまま、男をにらんで牽制する。
「オレはビクター。昨日お前さんが勝手に寝ちまったから、オレの世話になってる宿に連れてきたんだ」
ビクターがわざとらしく頬をふくらませる。
おどけ通す姿に、マテリアの気はゆるむ。
「昨日?」
そういえば、とマテリアは思い出してみる。
言われてみればビクターのほかに、二人の男性と会話した記憶がある。
(コイツと、少年の僧侶と……アスタロの顔をしたヤツ)
覚えているのは、遠くで友人のアスタロが襲われていたから加勢したこと。
でも襲われていた相手は、アスタロとは別人だった。ここまでは記憶にある。
じゃあ、昨日より前は?
しばらく考えて、考えて――何も浮かばない。
マテリアの鼓動が大きくなる。
「ここ、どこだ?」
一瞬、ビクターは意外そうな顔をしたが、「知らなくて当然か」と肩をすくめた。
「ここは元城下街、ダットの宿屋だ」
まどろんだ意識の中。
体を取り巻く温もりが気持ちよくて、マテリアはもっと温まろうと体を丸める。
(ん? スベスベする?)
マテリアが脚を動かすと、肌触りの滑らかな布がこすれた。
「よっ、おはようさん」
知らない男の声。思わずマテリアは目を開ける。
そこには隣のベッドで腰かけ、にやけ顔で見つめてくる男がいた。
何だか軽いヤツ、それが第一印象だった。
顔は決して悪くないのに、漂う空気が三枚目だ。
「アンタ誰?」
頭はハッキリしてきたが、体はまだ重く、動かすのは面倒だった。マテリアは体を横たえたまま、男をにらんで牽制する。
「オレはビクター。昨日お前さんが勝手に寝ちまったから、オレの世話になってる宿に連れてきたんだ」
ビクターがわざとらしく頬をふくらませる。
おどけ通す姿に、マテリアの気はゆるむ。
「昨日?」
そういえば、とマテリアは思い出してみる。
言われてみればビクターのほかに、二人の男性と会話した記憶がある。
(コイツと、少年の僧侶と……アスタロの顔をしたヤツ)
覚えているのは、遠くで友人のアスタロが襲われていたから加勢したこと。
でも襲われていた相手は、アスタロとは別人だった。ここまでは記憶にある。
じゃあ、昨日より前は?
しばらく考えて、考えて――何も浮かばない。
マテリアの鼓動が大きくなる。
「ここ、どこだ?」
一瞬、ビクターは意外そうな顔をしたが、「知らなくて当然か」と肩をすくめた。
「ここは元城下街、ダットの宿屋だ」