永劫の罪人 光の咎人
 あどけなかった彼に、神々しさが宿っていく。
 言霊は何度もくり返され、少年は生きながらに人と精霊の境目に近づいていった。

 少年が両手を広げ、固く閉ざしていた口を開く。

『天駆ける光の精霊、今ここに、その存在の徴を見せたまえ。闇にさらわれし御魂を、光の精霊の膝元へと誘う奇跡の路を創り出す力を、日輪の聖水に宿したまえ』

 ひとつ言葉を生むたびに、少年の口から光の粒が散らばる。
 少年は天井を見上げ、さらに光を一身に浴びる。不思議とまぶしさで目は痛くならない。

 光に受け入れられている。
 そんな心地よさを覚えながらも、少年の心に一点、戸惑いがにじむ。

(……どうしてこの儀式をやるんだろう?)

 こちらの心を読むように、精霊がまたたく。

(いけない、今は儀式に集中しないと……天駆ける光の精霊、どうか僕に力を貸してください)

 少年が心の中で語りかけると、精霊たちは光を強め、了解の意図を伝えてくれた。

 儀式が進むにつれ、ひとつ、またひとつ。精霊が壺の中へ飛びこんでいく。
 次第に壺の半分まで入れられた聖水が、光を放ち始める。

 壺の中に宿ったのは、精霊に恵みを与えられた太陽の欠片。
 天井の光と相まって、大礼拝堂は金色に包まれた。
 まるで、黄金(こがね)に実った稲穂畑のような輝きに満ちている。それが儀式の成功を物語っていた。

 精霊の祝福を得られたことに安堵し、少年は小さく息をついた。
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