永劫の罪人 光の咎人
「『永劫の罪人』って……そんな重そうな肩書き、本当に私のこと? うーん」

 昨日も確か、この国に災いをもたらした者とか言われていたなあ、とマテリアは天井を見上げながら思い出す。

 けれど、いくら頭を働かせても、出てくる答えなどない。

「やっぱり知らない。覚えていない」

 自分が今、ここにいるという実感はあるのに、胸の奥が大きな空洞だけで何もない。
 頭に詰まっていたはずの記憶も、なぜか残りカスしかない。

 何とか自分の中を埋めようと、マテリアは思い出し続ける。

 小さな痛みがひとつ、マテリアの胸に生まれた。

「覚えていないけど、何か引っかかる感じがする」

 ほんの少しだけ胸が苦しい。
 思い出せないから苦しいのか、思い出したくないから苦しいのか。

 さらに答えを探そうとしたマテリアの頭の上へ、ビクターが長い指の大きな手を置く。

「『永劫の罪人』かどうか、オレは知らんけどな。たった今決めた、お前は悪い奴じゃない。今はそれで納得しとけ。うん」

 マテリアの頭を笑ってなでるビクターの瞳が、心なしか優しくなった気がした。
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