永劫の罪人 光の咎人
「お、おはようございます。入ってもよろしいですか?」
ノックする音と同様に、遠慮しがちな少年の声が扉から聞こえる。
ビクターはマテリアから離れると、扉の向こうへ声を飛ばす。
「入れよロンド、開いてるぜ」
「で、では失礼します」
扉が音もなく開き、見知った顔だが別人の大男と、乳白色のフードつきの外套を深くかぶり、顔を隠した小柄な少年が現れる。
「あ、アスタロ……じゃなくて、ガストだったな」
マテリアが大男の名を言い直すと、彼は助かったと言わんばかりのため息をついた。
「一応覚えていたか」
「よかったですね、ガスト様」
二人が部屋に入って扉を閉めると、小柄な少年は頭のフードを外して顔を見せた。
「アンタは……ロンドって言ったな」
「はい。あらためて……初めましてマテリア様」
柔和に微笑んで、ロンドが深々と一礼をする。
「貴女のことと、昨日の続きをご説明するために参りました」
頭を上げたロンドと、マテリアは目が合う。
彼の瞳に濁りはなく、なんだか心を見すかされているような気がする。
昨日は法衣を着ていたから、おそらく僧侶なのだろう。
丁寧な仕草や、慈愛に満ちた目が聖職者らしい。
しかし口を開こうとしたロンドの表情は曇り、憂いの顔を見せる。
「うまくマテリア様にお伝えできるか、自信はありませんが……実は百年前にマテリア様は亡くなられています」