永劫の罪人 光の咎人
 奥の間に扉はなく、入り口からは金色にきらめく華麗な祭壇が見える。
 部屋の中央では、胸元で両手を組み、ひざまずいて祭壇に祈りを捧げる老僧侶の姿があった。

 祈りの言葉を言い終えた頃を見はからい、ロンドは教皇の名を呼んだ。

「あの、ヴィバレイ様……」

 ロンドに気づいた教皇ヴィバレイは立ち上がり、足早にロンドの元へ歩み寄った。

 齢を経て曲がった背筋。幾重にも顔へ刻まれた皺。腹部にまで伸びた立派な白髭は口元を隠しており、うまく表情がつかめない。
 しかし、今は小さな目がゆるやかに曲線を描き、機嫌のよさが読み取れた。

「おおロンド! 儀式は成功したようだな」

「はい。無事に秘薬を完成させました」

 背筋を正してロンドが答えると、ヴィバレイは満足そうにうなずいた。

「見事だ。予定よりも少々量は多くなったが、まあいい。よくやってくれた」

 ヴィバレイが顔と同じ皺ばかりの手を差し出す。ロンドは壺を落とさぬよう、ヴィバレイに手渡した。

 尋ねるなら今しかない。
 満足そうに壺をのぞくヴィバレイへ、ロンドは上ずった声で尋ねる。

「あの、ヴィバレイ様。ひとつお聞きしてもよろしいですか?」

「別にかまわぬが、何を聞きたいのだ?」

「僕たちは『むやみに光が闇へ還る流れに逆らってはいけない』と教えられてきました。秘薬の作り方は伝わっていますが、過去に作られたのは数えるほどです」
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