永劫の罪人 光の咎人
死人還りの秘薬を作る前に、ロンドは教会の文献に何度も目を通していた。
容易に生死を操ってはいけない、という教えのほかに――秘薬には副作用もあると書かれていた。
文献では、徳の高くない者に秘薬を使えば、生前よりも凶暴性を帯びたとも、破壊欲が強くなるとも書かれている。
中には、世を乱そうとする輩に変わってしまった者もいるらしい。
人格者でなければ、副作用を抑えられない。
そのため教えの中では、容易に秘薬を作ってはいけないと戒められている。
ロンドは胸騒ぎを覚えながら、おずおずと口を開いた。
「ヴィバレイ様は、一体どなたを甦らせようとしているのですか? どうして今、死人還りの秘薬を使わなければいけないのですか?」
小さくヴィバレイはうなると、声を低くして語りかけた。
「うむ……私はな、教皇ハミルを甦らせたいのだ」
ライラム教は千年の歴史を持っており、徳と法力が高い者を代々教皇としてきた。
そんな歴代の教皇の中でも、最も徳が高く、法力が強大と謳われた教皇。
それが百年前に没した教皇ハミルだった。
しばらくヴィバレイは沈黙し、悲しそうに目を細めた。
「本当はな、私の力が枯れるまでにロンドが成人となり、教皇になってくれればと願っていた。だが、今の私ではそこまで体がもたぬ……死期が近づいておる」
ふっ、とヴィバレイの顔がくもる。
「ロンドよ。お前の法力は申し分ないが、それだけでは教皇は務まらぬ。誰もが認める徳と貫禄を身につけなければいかん。その間、私の代わりに教会の象徴となってくれる者が必要なのだ。今より民衆の信仰心を失わぬようにな」
容易に生死を操ってはいけない、という教えのほかに――秘薬には副作用もあると書かれていた。
文献では、徳の高くない者に秘薬を使えば、生前よりも凶暴性を帯びたとも、破壊欲が強くなるとも書かれている。
中には、世を乱そうとする輩に変わってしまった者もいるらしい。
人格者でなければ、副作用を抑えられない。
そのため教えの中では、容易に秘薬を作ってはいけないと戒められている。
ロンドは胸騒ぎを覚えながら、おずおずと口を開いた。
「ヴィバレイ様は、一体どなたを甦らせようとしているのですか? どうして今、死人還りの秘薬を使わなければいけないのですか?」
小さくヴィバレイはうなると、声を低くして語りかけた。
「うむ……私はな、教皇ハミルを甦らせたいのだ」
ライラム教は千年の歴史を持っており、徳と法力が高い者を代々教皇としてきた。
そんな歴代の教皇の中でも、最も徳が高く、法力が強大と謳われた教皇。
それが百年前に没した教皇ハミルだった。
しばらくヴィバレイは沈黙し、悲しそうに目を細めた。
「本当はな、私の力が枯れるまでにロンドが成人となり、教皇になってくれればと願っていた。だが、今の私ではそこまで体がもたぬ……死期が近づいておる」
ふっ、とヴィバレイの顔がくもる。
「ロンドよ。お前の法力は申し分ないが、それだけでは教皇は務まらぬ。誰もが認める徳と貫禄を身につけなければいかん。その間、私の代わりに教会の象徴となってくれる者が必要なのだ。今より民衆の信仰心を失わぬようにな」