ガラスのタンポポ#虹
食後、また少し町を探索して、すっかり体が冷えきったところでまたホテルに戻ろうとする、と。


───パシンッ!


「?」


少し離れた奏来は、寒さで赤くなった小さな手に雪玉を持ち、オレをめがけて投げつける。


「コラッ!奏来!」


負けじと必死になり、せっせと雪玉を作って投げ合う。


バカみたいに楽しくて。


往復する雪玉が白くて。


奏来が笑って。


オレは手加減すら忘れて。


はしゃぐオレ達はカップルでいっぱいのクリスマスの軽井沢で浮いてて。


それでもかまわなくて。


「…っ!」


奏来の顔面にオレの投げた雪玉が命中。


「…プ。ハハッ!ごめん、ごめん、奏来。大丈夫か?」


近づいて奏来の顔にまみれた雪を払うと、


───パシンッ!


オレの顔にも雪玉が命中。


いたずらっぽく笑う奏来。


“油断大敵”


わざわざ奏来はそれだけメモって、走ってホテルへ入って行った。
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