ガラスのタンポポ#虹
───カチッ


部屋の電気が一斉に消えた。


そういえば。


クリスマス・ナイトで、夜の12時から3分間だけホテルの照明が消えるってフロントで説明されたっけ。


オレはベッドから降りて手探りで自分の鞄の中から小さな包みを取りだし、暗闇の中の奏来の手を探した。


オレの手を握った手をほどき、奏来の手に包みを乗せて。


「メリークリスマス」


そう言って。


少し目が慣れた真っ暗な部屋の中。


奏来の唇に。


ありったけの想いを乗せた、キス。


「…んっ………」


音の発しないはずの奏来の口から漏れた声は、サンタクロースからオレへのプレゼントだろうか。


奏来を抱き締め。


奏来にキスして。


奏来の髪を撫でて。


奏来をまるごと味わう3分間。
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