ガラスのタンポポ#虹
「もう、いないよ?」


「…え?」


「奏来ちゃんは、もういないよ?」


「どういう意味だ…?」


「おととい、奏来ちゃんは名古屋へ行ったの」


「え?」


「聖ちゃんさんの転勤で、一緒に名古屋へ行ったよ」


「なんだよ、それ…」


オレは聞いてない。


オヤジからも、兄貴からも。


奏来本人から、何も。


またかよ。


奏来はいつだって唐突にオレの元を去る。


喉頭ガンを知らされた時だって、何も言わずにオレから兄貴の元へと行ってしまった。


手紙一つを残して。


今度は。


花音にその役目を残して。

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