ガラスのタンポポ#虹
「だからね、もう翔くんは奏来ちゃんと会えないの。届かなければいいなんて思ってない。けど奏来ちゃんは…」


「奏来は?」


「あたしに…。あたしに翔くんといてほしい、って最後にメールをくれたの」


今から?


奏来が終われば花音との始まり?


間違ってる。


そもそもオレは奏来を終わらせちゃいない。


こんなにも募る切なる想いを。


奏来に置いたままだ。


「これ…」


「───!?」


花音が鞄から出したハンカチの中に大事そうにくるまれた物は。


オレがクリスマスに奏来に贈った、あのシトリン・クォーツの指輪。


綿毛にならないと言った、あの黄色い宝石だった。


「なぜ花音が持ってる?」


「奏来ちゃんが…。あのね、これ、預かったの。翔くんがあたしと一緒に心から笑える日が来たら返して、って。この指輪が奏来ちゃんの手に戻った日、奏来ちゃんも聖ちゃんさんの隣で笑うから、って。その日まであたしがみんなの笑顔をこの指輪と一緒に待っててほしいって、それで…送られてきたの」
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