ガラスのタンポポ#虹
奏来は。


どうしてこの大切な指輪を手放してまで、オレ達の笑顔を願う?


オレ達は想いを未来につなげた、それで、それだけでいいんじゃないのか?


わかんねぇよ。


オレはわかりたくない。


「この指輪、早く奏来ちゃんに返さなきゃならないよ、ね…」


「だから?」


「だから…。翔くん、あたしと…あたしと明日を見てください」


明日?


オレの明日は‘無’だよ。


誰にも恋せず、何も欲しがらない明日だよ。


放っておいてほしい。


なのに。


この指輪は、早くあるべき所に戻ってほしい。


奏来の。


左手の薬指に。


簡単じゃないか。


笑えばいい。


騙せばいい。


ちょっと花音とつき合って笑ったフリ、それでいいじゃないか。


花音を騙すなんて。


造作もない事。
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