ガラスのタンポポ#虹
「何か飲み物買って来るから、待ってろ」


「…うん」


タピオカ入りのミルクティーを買って席に戻ると、花音は今にも泣き出しそうな顔で謝った。


「…ごめんなさい」


「車椅子がとれたのは、家で大人しくする分にはかまわないって意味だろ?こんな所まで1人で電車乗って、オレがいつ帰るかもわかんねぇのに待ってちゃダメじゃん」


「だって…。だって早く翔くんと並んで歩きたかったんだもん…」


「わかるけどさ、今更焦るなよ。呼べばオレの方から行くから、さ」


「うん…。ごめんなさい…」


潤んだ目をこすってそれっきり黙ってしまった花音を見て、胸が痛んだ。


ダメ出しじゃなく、よく来たな、って言えなかったオレは。


やっぱり花音にふさわしくないんじゃないか。


今日まで弱音を吐く事なく、懸命にリハビリに励んできた花音に1つでいい、優しい言葉をかけてやれない、オレ。


オレと並びたい。


そう願ってここに来た花音を抱き締めてやれない。


つくづく情けないよ、な。
< 85 / 225 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop