【短編】アタシの年下クン
アタシの年下クン
「――――飲みすぎですよ」
そんな声と共に、手元にあったグラスがひょいと抜かれた。
手持ちぶさたになった手を力無く下ろし、ゆっくりと振り返った。
「ほら。顔真っ赤になってるじゃないですか」
さきほどまでアタシが手にしていたグラスを持ち、怒ったように眉を寄せる男。
でも、全く迫力がない。
フッと小さく笑い、アタシは口を開いた。
「お子様はもう寝る時間よ、透大(トウタ)クン」
さっさと返せと言わんばかりに、ひょいひょいと手を振る。
「そのお子様に注意されてる紫苑(シオン)さんの方が、子供なんじゃないですか?」
しれっとした目でアタシの手を一瞥して、透大はため息をついた。
…フン、何よ。
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