【短編】アタシの年下クン
触れるか触れない程度のキス。
スッと顔を離すと、青年は驚いたようにアタシを見下ろしていた。
『これで信じてもらえたかしら?』
そう尋ねると、青年は私に向けて微笑んだ。
それはもう、キレイな顔で。
不覚にも胸がキュンとした。
『じゃあ、これからよろしくお願いします』
『えっ?あ、うん』
うわ。
今の返事、何かすごく情けない。
くしゃりと顔をしかめると、青年はもうすでにアタシに背を向けていた。
…あれ?
そういえば…
『――っねぇ!』
アタシの声に青年が振り向く。
『あなた、名前は?』
危ない、危ない。
アタシとしたことが、名前を聞き忘れるなんて。