【短編】アタシの年下クン




透大と付き合い始めたアタシは、どんどん透大に惹かれていくのが分かった。


さりげなく見せる気遣いや、アタシを丸ごと包み込むような優しい笑顔。




『紫苑さん』




アタシを呼ぶ、声。


すべてがアタシに優しく響いた。


なのにアタシは、それを認めるのが悔しくて。


年下のくせに。


ガキのくせに。


と、卑屈に自分の気持ちに頑なだった。


どうしても自分から甘えるなんて、できない。


口を開けば皮肉ばかりで、甘い言葉を囁くなんて到底無理。


…でもほんとは。


縋りたくて、抱きしめてほしくて、仕方なかったの。


わがままなのは、十分に分かってる。


でも、それでも。


アタシを見つめる透大の瞳は、すべてを分かってるかのように微笑むから。


だから、アタシ―――。
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