【短編】アタシの年下クン
「透大ッ!!」
そう叫ぶやいなや、アタシは駆け出した。
嫌だ。
嫌だよ、透大。
「へ?…っう、わ!」
アタシのタックルを不意打ちで喰らった透大が、ドタンッ!と後ろに倒れた。
いって〜…と言いながら頭をさする透大の体に、ギュッと抱き着く。
「し、紫苑さん?」
驚いたような透大の声。
アタシはぐりぐりと透大の胸に頭を擦り寄せる。
「…どうしたんですか?紫苑さん」
いつもとは違うアタシに戸惑いつつも、透大はアタシの髪に指を差し入れた。
ゆっくりと撫でられる優しい感覚に、喉に張り付いていた嗚咽が漏れた。
嫌。
この温もりを失うなんて、絶対に嫌。