【短編】アタシの年下クン
ほろほろと流れ落ちる涙を、透大が目で追う。
「嫌、よ。透大」
アタシのつぶやきに、ハッとしたように透大はアタシの瞳を見つめた。
黒く澄んだ瞳が揺れる。
「も、わがまま言わない…意地、悪も言わないからッ」
「紫苑さん…」
「アタシのっ、傍にいて…」
本気にならないと、決めていたのに。
いつかこうなることは分かっていたから。
昼間のような女の子が透大には似合う。
可愛らしくて、ふわふわしてて。
まるでアタシとは正反対のような子が。
今だってそう思う。
でも、でも。
アタシ、透大を離したくない…
「透大あぁっ…」
離れたく、ない。