【短編】アタシの年下クン
「と、た…」
やっと、って何?
そう続けようとしたが、嗚咽が邪魔をする。
「もう泣かないでください。紫苑さんの涙を見るのは辛い」
そう言って眉を下げる透大。
アタシはその言葉にまたくしゃりと顔を崩し、透大の首に腕を回した。
「っ…ごめんなさい」
「何がです?」
ポンポンとあやすようにアタシの背中を撫でる透大の手が、心地好い。
「アタシ、わがままだから」
「そんなことないですよ」
「で、も」
「紫苑さん」
アタシの肩を押し、透大は真っすぐにアタシを見つめた。
そっと頬に両手を添えられる。
「紫苑さんは俺よりも大人だから、俺に弱音を吐くなんて考えられないって思ってませんか?」
ハッと目を見開くと、透大は優しく笑った。