【短編】アタシの年下クン
それに比べて。
(…いいなぁ)
目の前から歩いてきた大学生くらいのカップルを見て、心の中でため息をつく。
若いって、やっぱりいいよね。
『――――紫苑さん』
心地好いテノールの声が、アタシを呼ぶ。
『紫苑さん、好きです』
昨晩、アタシを抱きながら何度も何度もそう囁いていた。
…知ってるての。
ズズズッと音を立てながらオレンジジュースを飲み干し、小さく笑った。
(…今日は大学のゼミがあるって言ってたっけ)
残りのサンドウィッチを口に放り込み、置いていたポーチを手に取った。
『――――380円になります』
よし。
今日は一緒に借りてたDVDでも見よう。