【短編】アタシの年下クン
そう意気込んで店を出たアタシの目に、“それ”はあまりにも衝撃的だった。
『――――え?』
それだけしか、声にならなかった。
何で?
『透大クンっ!』
どうしてよ。
『早く行こう?』
その子、誰?
まるで地面に縫い付けられたかのように、アタシはそこから動くことができなかった。
道行く人が、往来の真ん中で突っ立っているアタシを、迷惑そうに見てる。
『と、た…?』
小さなつぶやきは、向こうの透大には届かない。
それどころか、アタシの前で見せるような笑みを見せて、仲睦まじく可愛らしい女の子と店に入っていった。
その様子を、アタシはただ見ているだけだった。