【短編】アタシの年下クン
え、何、コレ。
まさかの彼氏の浮気現場目撃!って?
まるで昼ドラみたい。
ハハッと自嘲気味に笑うアタシの声は、震えていた。
『…馬鹿』
ありえない。
こんなの、笑えない。
さっきまで浮かれていた気分が、一気に盛り下がる。
何よ。
アタシ、何だか馬鹿みたいじゃない。
さっきから胸元に入れた携帯が震えている。
あぁ、もうとっくに昼休みは終わっちゃってるのか。
先輩受付嬢の般若のような顔を想像して、苦笑した。
『…今日、早く上がらしてもらえないかな』
ま、無理だろうけど。
もう一度ちらりと店の入口を見て、カツカツとハイヒールの音を鳴らしながら、アタシは歩きだした。
…頬を伝う冷たい存在に失笑しながら。