【短編】アタシの年下クン
そのあとのアタシは、目もあてられない状態だった。
些細なことでミスをするわ、熱いお茶の入ったコップを自分の膝にひっくり返すわ。
もう、散々だった。
そんなアタシに先輩受付嬢は怒るどころか、むしろ心配してくれた。
『今日はもういいわ、雪村さん。帰ってゆっくり体を休めて?』
いつもとは違う側面を見せられ、小さく苦笑したが、それほどまでに今日の自分がひどかったのだろう。
素直に帰ることにした。
まだ暮れ切っていない空を眺めながら、トボトボと家路に着く。
中学生らしき女の子たちが、楽しそうに歓談しながらアタシの横をすり抜けていった。
『…馬鹿みたい』
何やってんの、アタシ。
たかが浮気現場を見ただけで。
そもそも、本気じゃなかったくせに。