チビ*ラブ



「言ったな……。
知夏、俺にそれは禁句だろ?」


笑ってるはいるが、黒いオーラが見える。



「私をバカって言ったお返しよ♪」



そう言って先に教室まで
走り出すと
後ろから志乃が「逃げるなよ」と叫ぶのが聞こえた。



そして知夏が先に走っていくのを見て志乃は歩みを止めた。



本当は知夏本人に気づいてほしかった。


自分から言えるはずがなかったのだ。

――――恥ずかしくて。



“知夏の男”として
志乃が彰太に認められたということを。



「……気づけよ、バカ」


知夏を想う志乃の言葉は
教室まで走っていった知夏に
聞こえるはずもなかった。





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