悲しき 極道

黄色いハンカチ

あの事件以来、
ワシをイジメるヤツはおらん。



ワシも4年生になった。

あのイジメっ子は、
中学を境に卒園しよった。


春休みに、
一週間の帰省があった。

帰省とは、
学園から出て家に帰れる時や。

まぁ、休みみたいなもんやな。


ただ、休み明けは必ず
どの寮も全員が揃わん…

やっぱり家に帰ったら、
学園には戻りたくないからな。



この帰省で学園に残ったんは、
5年の柳川とワシや。

柳川の親は刑務所で、
家には誰もおらん。


ワシは、自分から断った。

休み中、代官先生が
ワシと柳川を食堂に呼んだ。

 「今日は今から、
  黄色いハンカチ
  と言う映画観よう!」

先生は、買ってきた
お菓子を出してくれた。

ワシと柳川は、大喜びや!


ワシらはお菓子を食べながら、
テレビに夢中になった。


途中から、お菓子どころやなくなってもた…


ワシも柳川も、
感動に感動でグチャグチャや。


帰省でみんなが帰ってる羨ましいさと、
感動で余計ワシらを泣かした…


映画の内容は、
覚えてない。


横で代官先生も泣きながら、
ワシらの号泣で笑ってた。


残った者だけの、思い出やなぁ〜。
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