悲しき 極道
子供の日が
近なったある日の日曜日、
ワシはいつものよぉに
倉庫に隠れて
タバコ吸うてた。
ポカポカと暖かかった。
タバコ吸い終えて
くつろいでたら、
舞子寮の牧が
ニコニコしながらきよった。
「よぉ〜シュリ。
何しとん?
タバコあるから
吸う!?」
「ありがとぉ。
なんで自分ら
タバコ持ってるん?」
ワシは
「ワシも持っとんがな〜」
とは言わず、
羨ましぃフリした。
なんせ世の中、
人を騙したりしてでも
えぇ子になろぉとするヤツが
多いさかいな。
油断は禁物や。
「昨日
鷹取の高山から
もろてん〜」
「スゴいなぁ
自分らー」
みたいな。
調子に乗らしたった。
ワシんとこは、
ハマがいまだに、
毎週差し入れしてくれよる。
この前なんか、
テルコートとか言う
ウマいシンナーを
持ってきてくれよった。
ワシは頭ん中で、
勝ったなぁ〜
とか思いながら
牧の話なんか聞いてなかった。
次の瞬間、
ヨシケンの姿が
目に映ったと思たら、
目の前が
真っ暗になった…
…ヤバい…
意識が遠退きそぉに
なったけど、
なんとか持ちこたえた。
一瞬、
何がなんやら
分からんかったんやが、
前でバット持っとる
ヨシケンに飛びついた。
後は聞くまでもない。
ボコボコにドツいたった。
「タバコくれ!」
ワシはドツき終えて、
倒れてるヨシケンの顔に
ケツ乗せて座った。
牧は何も言わず、
ニワトリのよぉに
首降りながら、
震える手で
タバコ渡しよった。
コイツもグルやとは
分かったが、
何も言わんかった。
タバコ吸いながら、
屁こいたった。
ワシは倉庫から出て、
寮に戻った。
牧はヨシケンを
抱えて行きよったと思う。
あんまり覚えてない。
部屋につきなり、
意識が遠退いた…