悲しき 極道
気ぃついた。
暑ーて暑ーて、
汗だくやった。
横にはゼットンが座っとる。
窓の外からは、
チビの谷シンが
デカい頭だけ覗かしとる。
「よ〜かっだ〜
じんばいでた〜」
「ありがと…
布団何枚も
かけてくれて…」
「ぐ〜ん〜」
ゼットンは、
倒れてるワシが心配で
何枚も布団かけて
看病してたみたいや。
ワシは痛む後頭部を
おそるおそる触った。
…グチョグチョやった…
血は出てへんが、
なんか腫れ上がって
中がグチョグチョなっとる。
このまま死ぬかも…?
みたいな気分やったな。
せやけど、
なんでワシが
金属バットで殴られやな
アカンねや!?
ワシなんかしたかな…?
…いや、なんもしてない。
考えても分からん。
「びんだ〜
ば〜る〜ぎぃ〜」
分からんやろぉさかい、
通訳すると
「みんなわるい」
やで。
時間はかかったけど、
ゼットンは
牧とゲンがヨシケンに
ワシがケンカ売ってるとか、
文句言うてるとか
吹き込んでるのを
谷シンと見たらしぃ。
…おまえら…
そんなん早く言えよ!
って感じやった…
結局は、
牧が学園の
番長になりたいさかい、
企んだ事らしぃ。
…キンタマ小さいヤツや…
直接言うてきたらえぇのに。
直接言うてきたら、
気持ち良く
断ったんのに。
「お前には無理や」
って。
「お前ら、
知ってたんなら
もっと早く言えや…」
ワシは、
グチョグチョしてる頭を
触りながら言うた。
「兄ちゃん、
ごめんな〜」
谷シンが謝ってた。
まぁえぇか。
そんな事よりワシの頭、
大丈夫かなぁ…?
寮長に言う事も
出来やんさかい、
このままにしとくしかない。
なるよぉになるやろ。
ワシはしばらく、
頭をかばいながら
生活する事にした。