x.stage
 


何がどうなっているのか、必死に千夜が考えていると、カランとベルの音が響いた。


「あら、誰か来たみたい。」


スープの器を置き期待の目を部屋の入り口に向けた。

現れたのは陸ではなかった。

スーツのような紺色の服、胸には青いエンブレムが付いている。

長い茶髪を揺らしながら、入り口からこちらを覗き込んでいる。

千夜は男が陸でなかったことへのショックはあるものの、その綺麗な顔立ちについ見とれてしまった。


「よっ、久しぶり…って、患者さんいたのか。悪い悪い。」


手で拝むようにして弁解を示し、軽い調子で笑顔を見せる。

千夜が誰かと尋ねるより前に、架凛が男に向かって口を開いた。


「真郷、来るなら連絡くれればいいのに。仕事は終わったの?」

「うん、楽勝。って、その子大丈夫?ちょっと顔色悪いし…風邪ひいてるのか?」


突然ぐっと近づいてきた顔に、千夜の顔は真っ赤に染まった。

 
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