x.stage
「落ち着きなさい。彼女がまだ異世界の人間と決まったわけではないわ。」
千夜はその言葉に下を向く。
自分が異世界からきた、つまりここは千夜のいた世界ではない。
説明出来ないこの現状をその一言で解決出来てしまうことが、認めざるをえないということになる。
そんな千夜を見て、緋那は更に怒りが沸き起こった。
「っ……き、決まったようなもんだろ!国を知らない、ましてやそいつの言った国がここに存在しない!それに…兄貴のエンブレムを見ても反応ってことは、騎士団すら知らないんだろ!?おい女、答え―――」
パチンと肌を叩く音がした。
千夜がゆっくり顔を上げると、真郷が笑顔で向かい合う緋那にこう言った。
「餓鬼。」
緋那は顔を真っ赤にし、左手で頬を押さえたままこちらを向いた。
びくりと肩を揺らす千夜を一瞥し、早足で部屋を後にする。
「ごめんねー。俺に似て性格悪いんだわ。」
「はぁ…。」
つっこみづらい内容だけに、千夜は曖昧に返事をした。