x.stage
「相変わらずね、貴方の弟。」
架凛はスープの器を持ち、笑顔で千夜にまた寝るかと尋ねる。
しかし、突然敵意を向けられた後に寝ることは出来るわけもなく、千夜は首を横に振る。
そして尋ねた。
「久階さん、あたしが異世界から来たって本当ですか…?」
架凛はその質問を予想していたのか、淡々と答える。
「えぇ。ほぼ100%。緋那…さっきいたあの餓鬼が言ってたこと以外にも根拠があるの。…聞きたい?」
ちらりと真郷を窺ったが、彼は架凛の方を見向きもしない。
千夜に視線を戻すと、彼女は真っ直ぐこちらを見つめてこう言った。
「教えて下さい。」
架凛は小さく頷き、三人は居間に移動した。
―――…‥・
快晴の下、ロッジの屋根の上で緋那は仰向けに寝ていた。
兄に叩かれた頬は音がしたほど痛くはなく、改めて自分を止めるために叩いたのだと気づかされる。
「あの女が旅人…。」
そう呟いて目を閉じると、さっきまでの千夜の顔が鮮明に思い浮かぶ。
苦々しさを噛みしめ、彼は手で顔を覆った。