x.stage
 


高い木々に囲まれたロッジの屋根で、千夜は手を腰に当てて仁王立ちをする。


「あんたに言いたいことがあるの。」

「ったく…何なんだよ。」


真っ直ぐ見つめられ居心地が悪くなったのか、緋那はまた屋根に寝転がり、千夜に背中を向けた。


「あたし、旅人じゃないから。」


はっきりとした口調で、彼の背中に話しかける。


「あたしには旅人みたいに世界つくっちゃうような力もないし、知らない人のためにそんなこと出来るほどお人好しじゃないの。異世界から来た人のこと旅人って呼んでるんだったら、それは間違ってるよ。旅人本人に失礼。わかった?」


肯定も否定も示さず、緋那は溜め息を吐く。

ゆっくり起き上がり、あざけ笑いを浮かべてこう言った。


「お前、兄貴たちの話最後まで聞いてないもんな…。旅人は必ず帰って来る。そして帰って来た時、この世界の平和は終わる。」

「平和が終わる…?」

「騎士団が守ってきたものは、別に過去の約束の為じゃない。俺たち自身の為に守ってきたんだ。それを―――」


緋那はぐいっと千夜の右腕を引き、近づいた彼女に睨み付けるかのような眼差しを向ける。



 
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