x.stage
「お前みたいな女に壊されてたまるか。」
「っ……!!」
低く脅されているかのような声に、千夜は一瞬脅えた目を向けた。
しかし、すぐにその目は元の力強い光を戻した。
「お、おあいにく様、あたしは友達を連れてさっさと元の世界に帰るから!壊してる暇なんかないわよ!!」
右腕を振り回すと、予想していなかったのか緋那の手はあっさりと離れた。
「馬鹿っ!!危ねぇ!!」
「……えっ……きゃあぁぁ!!」
さっきまで脅していた人に心配されていることに驚き、千夜は自分の身体が丸太の屋根から離れていくことに気がつかなかった。
バランスを崩した細い身体が、2階の屋根から放り出される。
その瞬間、緋那は迷うことなく叫んだ。
「擬人演武、虎武!!」
叫び声とともに屋根を蹴り、千夜目掛けて飛び込む。
しっかりと抱き締めると、地面へ強い衝撃とともに降り立つ。
目を開けた千夜は、お姫様抱っこされていることに気がつき、急いで下りようと緋那を見た。
「っ……!ご、ごめん!大丈夫…って、えっ…う、嘘……。」
「…嘘じゃねぇ。」