x.stage
ちらりと上を見上げると、頬や耳が真っ赤になった緋那の顔が目に入る。
「ご、ごめんね、重かったでしょ!?」
「…あぁ、重かった。」
笑顔で右ストレートを繰り出そうとすると、小さく彼が呟いた。
「お前、変わってるな。」
千夜は一瞬ぽかんとしたが、すぐに言い返した。
「そっちの方が変わってるよ!あたしの世界は人が虎になったりしないもん!」
"あたしの世界"という言葉が自然と出てきた時、改めて自分が異世界にいることを認めさせられた気がした。
そんな千夜の表情を見てか、緋那は口を開いた。
「これが力、特別な人間に与えられるクラフトだ。」
「クラフト…。」
先程の半獣化した力が彼の力ならば、夏凛たちにもそんな力があるのではないかと考えていると、千夜の肩越しに声がかかる。
「君にはないのかい?クラフトに似た力が。」
声の主は真郷だった。
後ろからやってきた架凛も口を開く。
「話の続きになるけれど…旅人がどうやって国を広くしたのか、その答えがクラフトよ。」