x.stage
「選ばれた者にだけ与えられる力、それがクラフト。火を操る者もいれば、瞬間移動ができる者もいる。君が見た緋那の姿もそう。腕を見てごらん。」
真郷に言われ、緋那の腕を見る。
右腕の半袖ジャケットの下、肘に近い辺りに赤い蹄のような痕があった。
(懐かしい…。昔、どこかでこれを見た気がする。)
「赤い痣があるだろ。力を持つ者は、必ず身体のどこかにあんな感じの痕がある。」
「貴女には…ない?」
おそるおそる架凛に尋ねられ、千夜は首を振る。
自分の身体にこのような痣はない。
なぜ懐かしいのか、千夜は必死に思い出そうとする。
頭を過ったのは、いつも隣にいた彼の姿。
その様子を見ていた架凛は、静かに千夜の肩に手を置いた。
「ごめんね、突然色々と聞かれて混乱してるわよね。」
「えっ、あぁ、大丈夫ですよ!」
「だめよ、やっぱり休みましょ。ねっ?」
笑顔に押される形で、千夜はまたまたロッジの中に入って行った。
2人が扉の向こうに消えたのを確認すると、真郷は緋那に向き直る。