x.stage
 


* * *


鬱蒼とした木々の間から、太陽の光が反射して見える。

そこには小さな湖があった。

森の中心部にあるためか、人は滅多に近寄らない。

ここに訪れるのは獣や鳥だけ。

しかし、今日はその動物たちの姿もない。



暗く、深い色をした水から、1本の細い光が飛び出す。

桜色の明るい光。

この湖に似合わない、綺麗な光。

やがてその光は薄くなり、湖の真ん中で消えた。

残されたのは、一枚の花びら。

ひらひらと落ちる花びらは、水面に触れる瞬間、凄まじい風によって吹き飛ばされた。

花びらは高い木々の間をすり抜け、落ちることも、木に引っ掛かることもなく漂い続ける。



風が吹き抜けた湖には、またいつもの鬱蒼とした雰囲気が戻っていた。

先程までの光はもうない。

青い羽の鳥が、水を求めて飛んできた。

何事もなかったかのような、いつもの湖。

カルテットの森の中心部にあるこの湖、そこは架凛が千夜を見つけた場所と、さほど離れていない場所にあった。


 
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