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第二章
Un
毎朝起こすのは陸の役目だった。
低血圧なのはお互い様のはずなのに、陸の方がやたらと早く目が覚める。
朝食だっていつも先に食べていた。
千夜の好きな目玉焼きがかじられていれば、夕食にまで根に持っていたこともある。
学校に行く時だけは違った。
どんなに朝が遅くても、陸は必ず門の前で待っていてくれた。
あの長い長い平坦な道を、お互いに悪口を言いながら歩けば、住宅街の窓からおばあさんにくすくす笑われたこともある。
帰りは普段、千夜が友達と帰るのを知ってか、いつも先に帰っていた。
そういえば、桜並木の下で一人立ち止まって木々を眺めていた時、彼はなぜか必ずと言っていいほどやって来た。
ジーンズのポケットに手をつっこみながら、そんなの見てて飽きないかと千夜は尋ねられた。
どんな返事をしたか、まるで思い出せない。
それでも、彼は黙って付き合ってくれていた。
つい昨日までの話が、遠い昔の出来事のように夢に見た。
真っ白なベッドから起き上がり、6畳ほどの部屋を見渡す。