x.stage
食卓に並ぶ料理はどれも美味しく、目玉焼きの焼き加減は絶妙だった。
「今度あたしに目玉焼きを伝授して下さい。」
「何なら全て伝授するわよ?」
10品目近く並ぶ食卓を見て、千夜は急いで首を振った。
好意で言ってくれた架凛には悪いが、料理が苦手な千夜にはかなり厳しい。
「あら、いけない。もう1品作りかけだわ。」
コンロに向かう架凛を見て、天然なんだろうかと考えていると、部屋中にカランカランとベルの音が鳴り響いた。
「新聞かも。千夜ちゃん、ちょっとお願い。」
「はーい。受けとればいいんだよね?」
立ち上がり椅子とソファーの間をすり抜け、扉を押し開ける。
そこには誰も立っていない。
「…ピンポンダッシュ?」
千夜は呆れながらも、扉の横にある、ベルを鳴らしたと思われる赤い紐に何気無く視線を移すと、下に何かがいる。
紐を握っているのは、フクロウのような黒い鳥だった。
太り気味の体に、小さな赤い目と黄色く長いくちばし。
首輪には"17"という数字が書かれており、赤いショルダーバッグからは新聞がはみ出ている。