x.stage
「或茉。」
「あるま?」
「街の名前だ。大きさは翠鳳国で一二を争う。」
大通りに沿って2人は歩き出す。
道行く人はみな洋服なのに、街は江戸時代。
違和感を感じつつも、両脇からいい匂いが漂ってくれば、もう気にならない。
「ねぇ、緋那!あれ食べようよ!」
「あぁ?お前、何で人の名前を勝手に呼び捨てで……」
「いいじゃん!ほら、あのお饅頭!」
緋那の腕をぐいぐい引っ張ると、威勢のいい店員に笑われた。
「おじさん、それ2つください。」
「いらっしゃい。お嬢ちゃん、デートかい?」
「ち、ちげぇよ!おい、お前2個も食うのか?」
「うぅん、1個は緋那の分。」
食べるでしょと言われれば、緋那は溜め息を吐きながらもお金を払ってくれた。
渡された包みからは、焼きたてのお饅頭の匂いがする。
「いただきまーす。」
歩きながらそれをかじると、中から苺ジャムが溢れだした。
意外にも甘いお饅頭が気に入った千夜は、後ろをちらりと振り返る。