x.stage
後ろから、緋那が片手をポケットに手を突っ込んだまま歩いている。
熱かったのか、顔をしかめながらお饅頭にかじりついている彼を見て、千夜はくすりと笑った。
「……何だよ。」
「ふふっ、何でもなーい。あ、これごちそうさま。」
「たかが饅頭だろ。30円もかかってねぇ。」
レクエルドのお金が円で流通していることに気がついたが、相場の違いから日本の円とは違うかもしれないと千夜は考えた。
そもそもこの国は日本に類似している点が多い。
何より日本語が通じる。
レクエルドの仕組みは一体どうなっているのか、千夜には検討がつかない。
本当にこの世界に陸はいるのだろうか。
「おい、冷めるぞ。」
いつの間にか、千夜の隣を緋那が歩いていた。
饅頭はもうあと一口。
「緋那は冷めた方がいいんでしょ。」
「お前…馬鹿にしてるだろ?」
「お前じゃない。あたしには千夜って名前があるの。」
緋那は返答せずに饅頭を口に入れる。
「あれ、緋那斗くんじゃないか!」