x.stage
「ここに来る。」
男の切れ長の目が更に細くなる。
彼女の言いたいことがいまいちわからないと言った様子だ。
「隊長、それは一体……」
「その人はここに来る。だから、貴方の国に居ようが居まいが関係無いわ。必ず出会うから。」
「なるほど。じゃあ興味が無い訳ではないんだな。」
女は長いウェーブのかかった髪を翻し、男を見つめる。
強い視線、エメラルドの瞳が笑った気がした。
「これはアルの予言。私たちの仕事はそれを確かめること。」
その瞬間、男の頬を冷たい風が横切った。
思わず瞑った目を開けると、隊長と呼ばれていた女は従者を連れ、長い廊下を歩き始めていた。
「気をつけろ、シエラ。」
廊下に響くテノールに、シエラは振り返りもせず真っ直ぐに歩く。
従者の2人は丁寧に頭を下げ、また前を向いて歩き始めた。
その様子を見ていた男、潤の頭の中をシエラの言った言葉が過る。
「確かめる、ね。」
廊下に響くヒールの音が消える前に、潤はその場を後にした。