x.stage
 


陸は呆れながら雑誌に視線を戻す。


「並木道の桜ちょうど散ってるからな。風でこっちまで飛んできたか。」

「違う。桜色の光。」


もう一度陸は窓を見て、千夜に向き直った。

彼女の表情は先程から変わっていない。

無表情にただ一点を見つめている。

陸はベッドから起き上がり、何寝惚けてやがると言って千夜の頭を叩いた。

しかし、千夜は窓から視線をずらさない。

いつもなら怒りだすはずなのに、何かがおかしい。


「おい、千夜…」

「呼ばれた。」

「……は?」

「行かなきゃ。」

「どこにだよ…お前、マジで変だぞ!?」

「レ……エル……」


よく聞き取れないと陸が思った瞬間、勢いよく窓ガラスが割れた。


 
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