x.stage
 


「なっ………!!」


咄嗟に千夜の背中に腕を回すと、鏡越しに窓ガラスが割れ散るのが見えた。

その奥は真っ暗で、普段見えるはずの空も建物もない。

瞬きをした次の瞬間、そこは二人の部屋ではなく真っ暗な空間だった。


「何だよこれ………っ、千夜!気がついたか!」

「…ん……あれ、陸?あぁ…ピアスつけてて…えっ、何ここ!?」


さっきまでの記憶が無いのか、陸の腕の中で真っ暗な空間に驚いている。

千夜を抱き締めたまま、陸は辺りを窺う。

音も光もない。

ただ、千夜と自分の姿ははっきり見える。

何故かと考えている隙に、彼女は腕をすり抜け歩き始めていた。


「ちょっと待て!迂闊に動いたら―――」

「陸いるもん。大丈夫。それより早くこの夢から覚めたいな。」


夢じゃない。

陸はそう言おうと、彼女の後を追おうとした。

しかし、その足が前に踏み出ることはなかった。


 
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