傘恋愛 -カ サ レ ン ア イ-








さて、どうしようか。



お風呂上がりの濡れた髪をタオルでくしゃくしゃしながら、


ふと玄関の靴箱の上に置いた赤い傘が目に入る。



「雨の日にって言われてもなぁ」



そう小さく独り言を呟いて、テレビの電源を入れた。



グッドタイミングなのか、天気予報を知らせる音楽が流れ出した。




『明日は、全国各地で快晴に見守られる模様です、気温は・・・』





何も知らないお天気アナウンサーが、芝居じみた笑顔で言葉を繋げる。


笑顔にも種類ってもんがあるのか。





ふとさっきの彼女の笑顔が目に浮かんだ。





・・・要するに、雨の日に返しに行きゃあ良いんだろう。





俺はテレビを消してソファに寝転がった。







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